病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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入院先で悩む
 半年程前から下腹部に卵形の膨らみが目立つようになった。別に痛みもないのでさほど気にも留めなかったのだが、12月に入って卵形の膨らみが大きくなった。大きくなっただけでなくウィンナーのように長い形状に変わってきた。ちょうどその頃から下腹部に違和感を覚えると同時に鈍痛のようなものを感じだした。

 脱腸ではないかと思いインターネットで検索すると、病名を鼠径ヘルニアと呼ぶことが分かった。子供に多いと思っていたが、実はそうではなく40歳以上の大人に多い病気で、加齢と共に筋肉が弱ってくることから起こるらしい。
 腹膜(腹の一番内側の膜)が下腹部の筋肉の隙間から袋状に飛び出し、その中に腸・脂肪・膀胱などが脱出する病気で、出たり引っ込んだりしている間はいいが、出っぱなしで、横になっても引っ込まなくなると、出ている腸の部分に血流障害が起き、腐ることがある。その場合は緊急手術が必要だ。

 そこまで分かった時、もう手術をすることに腹を決めた。
問題は病院をどこにするかだ。暮れも押し迫った27日だったので、年明け早々に入院・手術をしたかったが、診断してもらったクリニックは手術装置がなかったので別の病院へ紹介状を書いてもらうことにした。

 「どこか希望がありますか」。そう聞かれたが入院希望先などはない。第一、鼠径ヘルニアの手術は何科でするのかという知識さえない。
「上手なところならどこでもいいです」
 手術に際して一番知りたいのは、やはりこの点である。
「誰でも、というと変ですが、鼠径ヘルニアの手術は盲腸の手術程度ですから難しい手術でもなんでもありません。外科医なら誰でもできる手術です」
 そう言われて少し不安が消えた。
自宅から比較的近い国立病院のほかに2つの病院名をあげられたが、国立病院以外は名前を聞いたことがある程度だったので、国立病院に紹介状を書いてもらうことにした。宛先は外科部長。正月4日に行く予定にした。

 これで安心のはずだった。ところが、年が明けると気が重くなってきた。別に手術が億劫になったわけではない。入院先としてそこがいいいかどうか迷いが出てきたのだ。紹介状の宛先は外科部長だから技術的には問題ないはずだが、病院が古くて待合いや廊下などが暗いのが気になったのだ。
 同じ入院するなら明るい方がいい。でないと気持ちまで病人になる。病は気から、という言葉があるように、気持ちが明るければ病気の治りも早いが、薄暗い環境で気が滅入るようだと治る病気も治らない。医療技術は病気治療に必要な絶対条件だが、それがすべてでない。むしろ必要なのは医師・病院と患者との信頼関係を含め、トータルで病気を治すことではないだろうか。

 さて、入院先を迷っている時、同じマンションの知人の奥さんが立ち話のついでに
「どこに入院されるのですか。九州中央病院にされればいいのに。近いし、広くて明るいですよ」と教えてくれた。ご主人が最近入院されたのだが、病院の印象がとてもよかったようだ。
 話を聞いて私は即座に入院先を変更することにし、再度、クリニックを訪ね紹介状を九州中央病院に再び書き換えてもらった。
 同病院は知人の奥さんが言った通りだった。エントランスは広く、しかも一部が2階までの吹き抜けになっており、非常に開放的で、初めて訪れた人の不安感を取り除き、リラックスした気分を与えてくれた。

 近年、患者のことを「患者様」と呼ぶ病院が多いが、あの呼称に違和感を感じるのは私だけではないだろう。それは国会議員が選挙の時だけ取って付けたように「国民の皆様」と言うのと似た感覚を覚えるからだ。
 呼称を丁寧にすればいいということではないはず。大事なのはむしろ中身。口では「患者様」と言いながら、診てやっているという態度を取る医師、病院もまだあるが、そうした病院はもう生き残っていけないだろう。
 表面的に「患者様」と呼ぶだけでなく、病院もサービス業という立場に立つことが必要だろう。そうすれば何が必要かは自ずと見えてくると思うのだが。
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by kurino30 | 2006-01-27 22:52 | Trackback(2) | Comments(0)
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