病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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九州中央病院の名医~その1~
 九州中央病院は名医が多い--入院中そう感じました。
胃カメラ検査をしてもらったN医師もその一人です。
Konishikiを小柄にした体型で、なんとなくユーモラスな顔立ちは、すでにそれだけで被検者に親しみを与えます。
しかも、体型に似合わず繊細で照れ屋のようです。

 私は前回にも書きましたが、胃カメラ検査をする時に鎮静剤を打つ方法と打たない方法の両方を経験してきました。
 鎮静剤を打つと知らない間に検査が終わっているので、管が喉を通る時の苦しみからは解放されますが、その代わりに検査中の出来事をモニターで同時に見たりすることも出来ないし、検査中に何が行われているのかも分かりません。

 私は何が行われているか見ておきたいと思ったから、鎮静剤なしで行う方法を選びました。結果は選択が正しかったことを証明しました。
N医師の技術が高かったので管が喉を通る時の苦しみも、検査中の痛みや苦しさもなく、比較的リラックスして受けることが出来たのです。
 だから検査が終わった後、「先生、名医だね」と、医師の技術を誉める言葉が自然に出ました。

 一般的にプロの技術を誉めるのはプロで、素人が誉めることは非常に少ないと思います。素人が誉めない理由は、一つにはプロは上手で当たり前と思っていること。もう一つは素人が誉めるのは失礼だと思っているからではないでしょうか。
 でも、誉められて悪い気は誰しもしないでしょう。もちろん、プロから誉められるのは、それだけ認められているということですから、より以上にうれしいでしょうが。

 しかし、プロの場合は細部にこだわって、あの技術はすばらしいなどと言うことがあります。いわゆる「玄人受けする」というやつです。映画などがその典型ですね。全然面白くもないのに、映画評論家が誉めるものがありますね。小説でもネチネチと男女のことを書く女性作家がいます。文章も下手だし、説明が多すぎるのに、いつの間にか恋愛物の大家みたいに言われている小説家が。
 たしかにプロから認められることも大事ですが、ユーザーの反応はそれ以上に大事だと思います。
 だからというわけではないのですが、被検者の反応をストレートに伝えておかなければと思ったことは事実です。

 胃カメラ検査が終わった日の午後、廊下でN医師を見かけたので駆け寄りまたもや私は誉めました。
「先生、明日、大腸の検査をしますが、明日も先生にお願いしますね。先生は上手だから」と。
 それに対してN医師は「ああ」と答えただけで、立ち止まることもなく、そのまま歩いて行ってしまったから喜んでいるのかいないのかも分かりませんでした。
 でも、実際には喜んでいたようです。
だって本人にだけではなく、検査室のナースにも、入院病棟のナースにも「N先生は名医だ」と吹聴していたのですから。

 なぜN医師が喜んでいたと分かったかといえば、検査の順番待ちをしている時にわざわざ私の側に来て「スケジュールを見たら、ぼくの担当にはなってなかったのだけど、ご指名なのでぼくがすることにしましたよ。今日も内視鏡でしっかりいじめてあげましょう」と言ったからです。
 どうも体に似合わず(失礼)とっても照れ屋のようでした。
その後も検査中に「同じことならもっと若い女の子に言われたい」と軽口を叩いたりしていましたから、やはりうれしかったのですね。

 もちろん、その恩恵は私にそのまま跳ね返ってきます。それはそうでしょう。互いにコミュニケーションが不足した中で検査を受けるのと、コミュニケーションが取れ、しかも好意を持たれている相手にはより丁寧に検査しようという気になるものです。
お陰で大腸の検査は実にスムーズに終わりました。さらに幸いなことにポリープの一つも見つからず、「腸はきれいです」と言われました。胃の方は少し荒れていると指摘されましたが、それでも潰瘍もポリープもなしでした。

 やはり医師は誉めるに限ります。というより、感謝の気持ちを素直に言葉で表現してあげることでしょう。それにしても、N医師は上手でした。
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by kurino30 | 2006-04-23 11:34 | Trackback | Comments(0)
「先生は名医だよ」
 胃カメラ検査の当日です。
たまたま同室の人も同じ日の同じ時間に検査を受けることになり、2人揃って呼ばれました。
受付で鎮静剤を打つか打たないかと聞かれたので、私は鎮静剤なしの方を選びましたが、同室の人は初めて胃カメラ検査をするから苦しくない方がいいと、鎮静剤を打つ方を選んでいた。
 「鎮静剤を使うと検査後すぐは歩いたり出来ないので30分程仮眠室で寝てから帰ってもらうことになりますがいいですね。入院されているから問題ありませんね」
 とナースが説明をしていました。

 さて、いよいよ私の番です。
検査室に入るとナースが「先生、鎮静剤なしだそうです」と医師にちょっと伺いをたてていました。少し声を落として尋ねていたので、あれ、鎮静剤なしと最初に言っているのにどういうことだろうと、私は一瞬思いました。
 ナースの言葉を聞いても医師は黙ったままでした。
するとナースはちょっと困った顔をして、もう一度繰り返しました。
「先生、鎮静剤なしですけどいいですか」
 再確認されてやっと医師は小さくうなずいたようです。
 おいおい、それはないよ。鎮静剤を打つか打たないか選べるようになっているんだから、客の希望通りにしてくれなければ。
 私はちょっと不安になると同時に、病院に対する不信感が一瞬過ぎりました。

 目の前に現れた医師は「千と千尋」に出てくる太った蛙(?)を想像させる体型をしていました。医者の不養生という言葉がありますが、先生、医者なのだからもう少しダイエットしなきゃあと思ったものです。
「鎮静剤なしだって? ちょっと苦しいかも分からんよ」
 医師は太った体をベッドの側に移動させると、優しい目をしてこう言いました。
「先生、腕がよければ苦しくないんだから」
 と私は笑いながら牽制しました。
「鎮静剤を使えば研修医にだってどんな名医でも及ばないといわれるくらい楽なんだけどね」
 医師も笑いながら応酬してきました。

 今日の検査はちょっと苦しいかも・・・。
そう覚悟しました。
胃カメラ検査で一番苦しいのは管が喉を通りすぎる瞬間です。
先が中に入ればあとは唾を飲み込む要領でグイグイと中に入っていきます。
とはいえ小指大の太さの管を喉から食道に入れるのですから違和感はあります。
喉元過ぎれば・・・、という諺がありますが、その諺通りに喉元を過ぎるまでが苦しくて、ゲーゲーと戻しそうになったり、実際少し戻したりもするようです。苦しくて涙も出てきます。
 鎮静剤を打てばこの苦しみを味わわなくて済むわけです。
ただし苦しさを感じなくて済むかわりに、リアルタイムで状況を把握することは出来ません。自分の胃の状態を見ることができないだけではなく、極端な話、カメラで胃壁を傷付けられても分からないわけです。
それが嫌だから私は鎮静剤なしを選んだのです。

 管が喉に入る時、涙まではこぼれませんでしたが、少し嘔吐(えず)きました。
「ああ、苦しいですね。大丈夫ですよ。まだ入れていませんからね」
 目の前で医師が優しく声をかけてくれます。
「少しずつ入れますから、大丈夫ですよ。はい、入りました。もう苦しくはありませんからね」
 えっ、もう中に入ったの?
そう思ったぐらい、あっけなく一番の難所を通り過ぎました。

 目を開いて枕元のモニターを見ると、カメラがどんどん中に入っていく様子が見えます。
「この奥が十二指腸です。ちょっと覗いてみましょうかね」
 医師の優しい声が途切れずに聞こえます。
 2年前、某医院で胃カメラ検査をした時は十二指腸の入り口にカメラがなかなか入らず、「入らんな、入らんな」と言いながら無理に何度も入れようとするものだから時間もかかり非常に苦しかった記憶が十二指腸と聞いた瞬間よみがえりました。
 これからが苦しいんだ。
そう思って体を硬くしましたが、カメラは何事もないかのように進んでいきました。「はい、これが十二指腸です。これで全部見ましたよ。これからカメラを抜いていきますからね」
 モニターに映し出された映像が徐々に遠ざかっていき、管が抜かれていくのが分かりました。

 管が全部抜かれ上体を起こすと、思わず口をついて言葉が出ました。
「先生、上手じゃないですか」
 医師の反応はありませんでした。
でも、こんなに楽だった胃カメラの検査を経験したことはなかったので、帰り際にもう一度ナースに言いました。
「先生は名医だよ。上手。鎮静剤打たなくて正解だった」
「そうなんです。先生はとっても上手なんです。よその病院からも来てくれと言われているぐらいなんですよ」
 私に先生をほめられて、ナースも喜んでいました。
「先生に言っといて。名医だ、と」
 そう伝えて私は検査室を後にしました。
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by kurino30 | 2006-04-18 20:13 | Trackback | Comments(0)
入院中に前立腺、胃、大腸ガンの検査をする
 今回の入院では当初から主治医にお願いしていることがありました。
それは手術とは直接関係がない部位の検査です。
具体的には前立腺と胃、大腸の3カ所のガン検診です。

 年に一度は定期検診、といわれていますが、私が胃カメラ検診をしたのは2年前。
大腸カメラはそれよりさらに2年前です。
もしかすると・・・、そんな思いも一方ではありました。
それなのにいままで内視鏡検診を怠ってきたのです。
いや、検査をしなければと思っていましたし、実際に病院に行こうと考えてもいました。
にもかかわらず、いままで行かなかったのは、どこの病院に行ったらいいか迷っていたからです。

 胃カメラも大腸カメラも経験があるのだから、以前かかったところに行けばいいようなものですが、ある疑問を感じた瞬間から足が重くなってしまいました。
それは胃カメラを飲む時に鎮静剤を打つか打たないかということだけです。
それまでは何も感じずに、こんなものだと思っていたのですが、目が覚めた時、自分がそれまで知らないベッドに寝ていたことに怖くなったのです。
これでは検査中に何があっても分からない、ということへの恐怖です。

 不思議なもので、わずかでも恐怖を感じると、もうダメなんですね。
どんなに大したことではない、寝ている間に検査される方がされる方もする方も楽だし、第一苦しい目に遭わなくて済むのだからと、いくら自分に言い聞かせても足がすくんでしまうのです。

 そのため次に胃カメラ検査をするまでに2、3年かかりました。
そして今度は鎮静剤を打つか打たないかを自分で選べる病院を探して(知人に紹介してもらい)検査してもらいました。
 ところが、この医師が下手で、カメラが胃から十二指腸に行く時になかなか入らず、もう十二指腸の検査はいいからやめてくれと言いかけたほど苦しかったのです。
そうなるとますます次は怖くなり、どこにも行けなくなりました。

 だから、わざわざ検査に行こうという気は起きなかったのですが、今回は入院中です。なにかあっても安心、という気も多少ありましたし、この機会を逃すと本当に病院嫌いになってしまうと思いました。大袈裟ではなくて。
その先に待っているものは、発見された時は手遅れです。
それもいいか、と思ったりもしましたが、やはりまだ現世に未練もあります。
早期発見で助かるなら、それに越したことはありません。

 そこで、この機会に前立腺、胃、大腸のガン検診をしてもらうことにしました。
前立腺ガンは最近では血液検査で発見できるようです。
だから、これは取り敢えず採血だけです。
 問題は胃カメラと大腸カメラ検診です。
一応、開腹手術をしているので大腸は一番最後、退院前日にすることに決まりました。
そして先に胃カメラの検査をすることに決まりました。
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by kurino30 | 2006-04-12 07:50 | Trackback | Comments(0)