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病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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前立腺がんの手術で20日間も入院中って?
 前立腺ガンが発見されてから6年間経過観察だけで過ごしてきた。経過観察とは治療を何もせず、3か月に一度血液検査、尿検査をしPSA(前立腺ガン腫瘍マーカー)の数値を確認するだけで、その他に半年に1回CT検査、1年に1回MRI検査をし状況を詳しく診ていく。
 経過観察のみで行くと決めたのは自分からで、医師からは手術か放射線治療を勧められたが拒否してきた。

 私の場合、妻と弟を膵臓ガンで亡くし、私の膵臓にも嚢胞(のうほう)が見つかっている。これがいつ悪性腫瘍になるか分からないという懸念がありMRIでは嚢胞の変化を常に見ているが、今のところそちらの変化はなく来ている。
 前立腺ガン発見から6年間経過観察だけで来た患者は担当医にとって初めての経験だったに違いない。
 ただ6年間、PSAの数値は緩やかに上向いてはきたが、このままでもいいのじゃないかという思いがあり、3か月に一度の定期検診もやめようかと考えていた。3か月に一度注射針を刺され、半年に一度放射能を浴び続けるのとどちらのリスクが高いか分からないと考えたからだ。
 それで今回を最後にしようと受けたMRI検査で「ガンが大きくなっている」と告げられた。

 ガンが大きくなったのなら仕方ない、と手術を決意したが、結論から言えば、少し早まった、と感じている。今まであれほど慎重に来たのに、手術を即断せずもう少しじっくり考えた方がよかったと思ったからだ。
 理由は後日、MRI検査の診断結果をよく読んでみると、医師の言葉は少し誇張気味で、検査報告書にはガンがわずかに拡大しているという表現で記されていた。

 前立腺ガンの手術は「ダヴィンチ」と呼ばれるロボット手術。腹に5、6か所小さな穴を開け、そこから鉗子等を入れ前立腺を摘出する腹腔鏡手術である。
 利点は開腹手術に比べ傷が小さい分治りが速いこと。
ただ、腹腔鏡手術は全身麻酔になり、私の不安点はそこに1つあった。

 手術室に入ると麻酔医らしき人の姿が見えなかったので、麻酔をかけられる前に麻酔医の存在を尋ねると「私です」と若い(その時はそう見えた)女性が返事したので驚き「男性かと思っていました」と返事しながら「私は麻酔が一番怖いんです。麻酔事故が多いから」と懸念を口にすると「大丈夫です、私は20年のベテランですから」と不安を払拭された。
 記憶にあるのはそこまでで、手術が終わり手術台からICU(集中治療室)に移される直前まで何がどのように行われたのか全く意識にない。

前立腺がんの手術で20日間も入院中って?_b0039302_09153892.jpg

 当初計画では順調に推移すれば術後4、5日でお腹に開けられた排液用の管が抜かれ、6日目に造影検査で尿道の縫合が上手くいき周囲に漏れがないことが確認されれば翌日か翌々日に尿の管(尿道カテーテル)も抜かれ、入院10日目に退院となる手筈。

 だが、術後2週間が過ぎたが私はまだ入院したままで、尿道カテーテルは抜かれるどころか差し込まれたままだ。一時期に比べ尿に血液が混じる量は減り、激しい痛みに襲われて痛み止めを飲まなければ身体をくの字に曲げて脂汗を滴り落とす状態からはなんとか解放されたが、まだ尿に濁りがあり健康な尿の色ではない。

 入院期間が大幅(?)に延びている理由の1つは膀胱と尿道の縫合部からの漏れ。前立腺全摘の際、尿道が切れるので前立腺摘出後、膀胱と尿道をくっ付ける吻合を行うが、吻合の際締めすぎると排尿困難になる。
 従兄弟は吻合の締めすぎで退院が1週間遅れたと言っていたが、私の場合は吻合がまだ完全でなく、吻合部からの液漏れがあり、1週間後に再度造影検査を行い液漏れが止まっているかどうかの再確認をすることになった。

 1週間後に2度目の造影検査。尿道カテーテルから造影剤を注射器のようなもので押し込み吻合部から漏れがあるかどうかを確認し、吻合がきっちり行われ漏れがないことが分かれば、その場で尿道カテーテルを抜くか、2日前後で抜かれることになる。

 ここで問題が発生した。膀胱が委縮したままで膨らまず造影剤が規定量入る前に尿意を催したのだ。
 膀胱が委縮したままでは少量の尿でも尿が溢れるような感じになり、退院後、頻尿に悩まされることになる。それは困る。
 2度目の造影検査では膀胱の萎縮が治っているかと考えられたが期待は裏切られた。
 「合併症という程ではないが」と言いながら、医師も原因がはっきり分からず多少困った様子だったが、取り敢えず膀胱壁を柔軟にする薬をしばらく服用するようにと頻尿防止薬ベタニスを処方。

 その2日後、尿道カテーテルが膀胱から抜け落ちないようにとカテーテルの先端に取り付けている「風船」内の液を少し抜く。「風船」が邪魔して膀胱が歪な形になっているのではないかと考えたようだ。

 相変わらず尿内に浮遊物が認められ、これは自分が尿を見ていても確認され、あまりいい傾向ではないと考えていたが、医師も膀胱炎を起こしているかもと考えたようで、翌日から抗生物質の投与。

 術後、回復に向かって一直線という感じではなく一進一退のように遅々としてきたが、担当医もいろいろ考え、丁寧に対応してくれているので、後は憂いなく退院へ進むのを待つばかりだが、さらに入院が長引くのか、退院できるのかの結論が出るまで後数日はかかる。

 それにしても通常10日で退院できる手術で20日も入院というのはどうも・・・。
若い頃に加入し掛け替えをせずそのままにしている生命保険があるが、その保険は20日以上の入院でないと入院手当がでないため、一度も利用したことがない。 今時20日も入院する手術はよほどの大手術しかないからだが、その保険が使えることになろうとは思ってもみなかったが、無事退院できるのかどうか心配になってきた。


# by kurino30 | 2024-11-30 09:19
前立腺がんの手術を決意
 「えっ、手術されますか」
 担当医は身体をのけ反らせて驚いた。
そんなに大げさに驚くか、と思ったが、担当医にしてみれば私の返事が想定外だったようだ。

 この日は7年前から3、4か月に一度のサイクルで行っている定期検査で、いつもは採血と採尿検査だが、半年に一度CT検査が加わり、さらに1、2年に一度MRI検査が加わる。
 主な目的はPSA(前立腺癌の腫瘍マーカー)の数値測定だが、この日は採血、採尿にレントゲン、超音波、MRI検査まで行われた。
 なぜここまで検査をするのかというと、ここ1、2回PSAの数値が急上昇していたからで、いままでのような経過観察ではなく手術とか放射線治療などなんらかの「積極的な治療を」考えるべきだと告げられていた。

 その段階で、自分の中では治療に踏み切る覚悟をしていたし、医師も「いままでのような経過観察ではなく積極的な治療を考えるべきでしょう」と告げたから、てっきり手術日の話になるのかと思っていると「本当はもう一度生検するのがいいんですが、生検は嫌でしょ。細菌に感染するリスクもありますしね」と、こちらの返事を勝手に代弁する。

 私はそれに反対したわけではなく、治療止むなしかなと考えていたが、担当医は治療を積極的に勧めるわけでもなく「本当はもう一度生検するのがいいんですが、生検は嫌でしょ。PSAの数値は他の要因で上がることもありますからね。今までも多少上がったり下がったりしていますから、もう一度検査してみましょう」と、それが私の返事であるかのように自答し、決めてしまった。

 それを聞き、1週間そこら後に再検査になるのだろうと思い「分かりました」と答えた。
 半年前に17.2に上昇したPSAの数値が、その3か月後の検査で21.2に急上昇したのだから、これはもう見守り観察を続けている段階ではない。癌が転移しないうちに手術した方がいいだろうと覚悟を決めた。
 前立腺癌は進行が遅いことで知られているが骨に転移すると手術も出来なくなる。そのために3か月に一度検査し、癌が局所限定に留まり、大きくなっていないか。他の部位に転移していないかを診ているのだ。
 だから再検査と言われた時、検査の正確度を期すため数日か1週間前後にもう一度検査するのだろうと考えた。

「では次の検査は〇月〇日にしましょう」
 その言葉を聞いてこちらが驚いた。
えっ、それって3か月後? それは定期検査のサイクルじゃないか。そんな後で大丈夫なのか。その間に転移したらどうするんだ、と。
 でも、まあ、担当医が言うのだから慌てる必要はないということなのだろうと解釈し、それ以上質問しなかったが、帰宅後パートナーから怒られた。

 本当にそんな先でいいの。先生はどう言ったの。なぜ、もっと聞かなかったの。今度は私も同席する、と。

 そして3か月後の5月某日。朝9時から諸々の検査を受け、おまけに、というのもおかしいが、何かミスがあったようで採血のやり直しまでされ、吸血鬼かお前たちはと心の中で毒づきながら、検査結果が出るまでの1時間余りを院内のコンビニでパンとコーヒーを注文し、どこぞの校長のようにレギュラーサイズにラージサイズの分量を入れることもなく、きっちりレギュラー分量を入れたコーヒーを飲みながら待つのが、検査日のルーティンになっている。

 順番が来て医師の前に座る。
40代後半と思しき担当医はいつものように検査結果報告書を広げながら説明を始めた。

「今回、PSAの数値は16.7でした」
「下がってますね」

 前回よりかなり下がっているどころか半年前の前々回の数値より下がっている。ここまで下がっていれば「積極的な治療」はもう少し後回しにし「しばらく様子を見ることにしましょう」と言うのではと思い、担当医の次の言葉を待った。
「そうなんです。PSAは下がっているんですが」
「が」で言葉を切られた時嫌な予感がした。
 なんだ、なにかあるのか、と。

「癌が少し大きくなっています」
 この言葉は予期していなかっただけに驚いた。PSAの数値は下がっているのに癌は大きくなっている? 普通は癌が大きくなったからPSAの数値が高くなっているではないのか。これって矛盾していないかと思ったが、MRIの検査で癌の大きさが確認できたのだから間違ってはいないだろうと考え「手術します」と答えたら、担当医がビックリしてのけ反ったのだ。

「手術されますか」
 医師は再度、同じ言葉を繰り返した。
「癌が大きくなっているんでしょ。手術しますよ」
「そうですか。手術はお嫌かと思っていましたが」
「いや、先生、私は手術が嫌いなわけではないんですよ。ただ75歳過ぎれば手術をしてもしなくても残りの年数は変わらないというデータが外国で示されているから、手術をしなくてもいいかと考えていただけで。でも、癌が大きくなっているなら手術しますよ」

「手術は先生がされると言われていましたよね。先生、腕はいいんですか」
「名医がよければ紹介しますよ」
「それは誰ですか」
「Q大病院の先生です」
 同じ病院の医師ならそちらにお願いしてもいいという考えがちらっと過ったが、別の病院の医師に、恐らく担当医の恩師ではないかと思うが、転院してまで手術してもらうほどのことではない。

「先生、私に任せてくれ! と言わないんですか」
「いや、普通は言いますよ」
「どうして言ってくれないんですか」
「それは栗野さんが特別だからです」
「そうですか。私は言って欲しかったな。先生と付き合っていて、人柄はいいと思っていましたし」
「人柄とあれは・・・」
「ええ、分かっていますよ。人柄がよくても技術は別だと」
「そうなんですよ」と担当医が応じ2人で笑い合った。
「私は信頼したら全てお任せしますというタイプですから」
「分かりました。私に任せて下さい」
「はい、お願いします」

「手術の場合、前立腺の周囲に勃起神経があり、それを残す方法と広範囲に取り去る方法があります」
「それぞれのデメリットは」
「勃起神経をできるだけ残す方法だと癌細胞に取り残しがあったりし再発するリスクがあります。前立腺の周囲を広めに取り去ると再発リスクは減ります。ただ術後、尿失禁が起こります。ですが大抵の人は1か月ぐらいで治まります。勃起神経を取るとSexはできなくなります。どちらがいいですか」
「う~ん、死刑か終身刑かみたいな話ですね。もうSexはできませんといわれるのと、現実的には同じようなものでも可能性が1%でもあるのとではですね。まあ、Sexの方はもういいです」
「そうですか。ほとんどの人がそう言われますね。中にはできるだけ勃起神経は残してくれと言われる方もいますが。そう言う人は外国人の方に多いですね」
「私の場合は尿漏れの方が嫌なんです。写真を撮りに出かけるのが趣味ですから、尿漏れがあると外出が億劫になり、生活の質が・・・」
「クオリティ・オブ・ライフですね。術後1か月近く続く人もいますが、骨盤底筋を鍛えると早く治ります」

 こんな2人の会話を側で聞いていた看護師が診察室を出た後、今後のことについての説明をしに来て「お二人の会話は漫才を聞いているようでした」と笑っていたが、自分でも掛け合い漫才をしているような感じだった。

「S先生は上手ですから。今日は随分遠慮なさっていましたが、お上手ですから」と、二度も「お上手」と医師をフォローしていた。
 そうだろうと思う。年齢も40代後半。医師として最も脂が乗り切っている時期であり、手術例も多いはずだ。

 というわけで手術をすることが決まったのだが、なぜ手術日が11月と先なのかといえば手術支援ロボット「ダヴィンチ」がその頃まで予約一杯で空かないかららしい。
 「ダヴィンチ」は手術現場に変革を起こしたと言われ、現在国内で570台以上が導入され、前立腺癌で保険適用になったこともあり、前立腺癌手術はほとんど「ダヴィンチ」で行われている。

 前立腺癌の治療法は大きく分けて3つある。1つは手術(開腹、腹腔鏡)で、2つ目が放射線(重粒子線も含む)、3つ目にホルモン治療だ。ホルモン治療は手術も放射線照射も出来ない場合で、最後の手段になる。
 当初、私は治療は重粒子線治療を行いたいと考えていて、医師にもその旨伝えていた。重粒子線を選んだのは当時、最先端の放射線治療で、体への負担が少なかったからだ。
 ただ重粒子線治療施設は少なく、まだ九州にはなく近くでは兵庫県たつの市に施設があったぐらいで、それから程なく佐賀県鳥栖市に、また最近では鹿児島県にも開設されている。
 鳥栖市に施設ができた直後ぐらいにそれまでの先端医療指定が外され保険適用になっているので随分重粒子線治療を受けやすくなった。

 それなのに今回なぜ重粒子線から手術に替えたのかといえば後遺症の問題が分かったからだ。
 きっかけは友人がたつの市の施設で重粒子線治療を行い、術後は実に快調で喜んでいたのだが10数年経って排尿困難になった。常時排尿困難というわけではないが、尿が出にくくなり膀胱に貯まるものだから苦しくて堪らず、何度か救急車で搬送された。
 導尿すれば嘘のようにすっきりするらしいが、どうも重粒子線治療で尿道が少し傷付いていたらしく、その影響が術後10数年後に現れたのだ。

 この話を医師にしたところ、放射線治療のデメリットだと教えてくれたが、最初の説明の時はなかなかそういうデメリットはこちらが尋ねても教えてくれない。長年、同じ医師と付き合っている会話の中で分かったことで、看護師でもこちらから○○という事実があると話すと、そうなんですとデメリットについて答えはするが、こちらに知識がなければ向こうから積極的に教えてくれることはないだろう。

 尿漏れと排尿困難とどちらの方がまだマシか。看護師は私があまりにも尿漏れのことを心配しているからだろう「尿漏れと言ってもだだ漏れになるということではありませんから」と慰めてもくれた。
 後は医師を信じて任せるだけ。といっても手術するのはまだ5か月も先の話だが。


# by kurino30 | 2024-07-24 10:22
治療の副作用だけでなく、生検リスクもある~前立腺ガンと告げられて(3)
治療法の選択を迫られる

 さて私の場合。生検の結果ガン細胞が見つかったと告げられ、その場で次の検査を指示された。ガンのステージの確定である。それには骨シンチグラフィーという検査が必要になる。
 要はガンが前立腺の範囲内にとどまっている(局所限定ガン)か、それとも転移しているか、転移する可能性があるかを調べるのだ。それにより治療法が変わってくる。
 治療法は大きく分けて3つ。手術でガンを切除する方法と放射線でガン細胞を死滅させる方法、そしてホルモン療法だ。どの方法を取るかはガンができている場所やステージにもよるが、ホルモン療法は手術も放射線治療も望めない場合に採る方法のようだ。

 「中リスクでした」。骨シンチ検査の結果を説明しながら、医師はそう告げた。
「初期リスクだろうと思っていましたが、中リスクですか?」
「はい、中リスクです。ただ、骨への転移はないし、局所限定ガンですから手術、あるいは放射線での治療になります。どうされますか」
「以前にもお話しましたが手術の場合は術後、勃起障害や尿モレが起きることがあります。以前は広範囲に切り取っていましたが、最近は技術も進化してできるだけガンの周囲だけを切り取り、神経を傷つけないようになっていますが、それでも広範囲に切り取らなければならないことがありますし、その場合は副作用がでるというリスクはあります」
 手術に限らず放射線治療でも同じような副作用はあると言い、「どちらが嫌ですか。セックスができなくなるのと、尿モレと」と30代後半と思しき医師は尋ねた後、バカな質問だったと気付いたようで「どちらも嫌ですよね」と自答した。

「先生、選択肢は2つだけではないでしょう。もう一つありますね」と問いかけると
「あっ、重粒子線治療を言われていましたね。放射線治療の1つですが、それもあります」
「いや、そうじゃなく。何もしないという選択もあるでしょ」
「? 経過観察ですか。それは初期リスクのガンの場合はありますが、中リスクは」
ありえない、と言いたかったのかもしれないが、それ以上は言わず、とりあえずまた3か月後にPSA検査をすることになった。3か月の経過観察だ。

副作用とQOLのバランス問題

 私がしばらく経過観察(監視療法)を選んだのには理由がある。1つはガンのステージが中リスクとはいえ、初期リスクに近い中リスクだろうと感じたからだ。
 2つ目は治療の副作用である。副作用に対する受け止め方は医師と患者では違うし、患者の間でも個々人で違うし、また年齢によっても異なるだろう。
 だから以下は私個人の受け止め方であることを最初にお断りしておくが、副作用は生活の質との関係で捉えるべきだと考えている。

 C病院の若手医師は私との会話の中で「セックスができなくなるのと、尿モレとどちらが嫌ですか」と尋ねたが、「勃起障害」という言葉ではなく「セックス」とサラリと口にした点は好意的に受け止めた。
 これは人にとって重要な問題であるからこそ、遠回しな言い方ではなく直接的な表現で言ってもらった方が理解しやすい。ただ、サラリと言うことが重要だが。

 「できなくなる」というのと「する、しない」というのは全く違う。前者は物理的に不可能になるということである。対して後者は物理的な可能性はあるということで、それを行動に移すかどうかは主体が決められるということだ。
 自分で選べるかどうか、選べる選択肢が「ある」のと「ない」のでは精神的に全く違う。例え結果として勃起しなくてもだ。

 次は尿モレ、排尿困難、便秘等の副作用である。この点を治療開始前に医師がどの程度詳しく伝えてくれるだろうか。恐らく患者側から、それこそ「こういう場合があるのでは」「こんな話を聞いていますが」などと根掘り葉掘り尋ねない限り、通り一遍の説明で終わるのではないか。

 実は10年近く前、前立腺の粒子線治療をした友人がいる。前立腺の粒子線治療はこの4月から健康保険適用になったが、それまでは先進医療で費用の250~300万円は自己負担である。
 私は先進医療特約を付けていたから、治療する場合は友人が入院治療した兵庫県の粒子線治療センターでと決めていたし、C病院の医師にもそう伝えていた。

 粒子線治療のメリットはピンポイントでガン細胞を狙い撃ちできることだ。放射線による副作用もないに等しいだろうと、大した根拠もなく考えていた。実際、粒子線治療をした友人は術後、普通の生活をしていたし、問題は全く見当たらなかった。
 ところが、数年前、排尿困難になり救急車で病院に運び込まれるということが数回起きた。尿は常に出ても困るが、出なくても困る。特に排尿困難はのた打ち回るほど痛いらしい。
 だが、友人から排尿困難で入院し導尿してもらったという話を聞いても、そのことと粒子線治療が結び付かなかった。しかし、これは紛れもなく放射線治療の副作用で「粒子線治療で尿管が傷付いている。そうなる人もいる」と医師から聞かされたとのことだ。
 以来、友人は、いつ、どんな状況で排尿困難な状態に陥るか分からないという不安から海外旅行はもちろん中期旅行でさえ行けなくなった。

 尿モレの方はどうなのか。どの程度漏れるのか、大人用の薄型オムツ程度で済む話なのか、それでは済まないのか。
 それは個人差があるから一概には言えない、と言われれば(恐らくそう言うのだろうが)ますます困る。
 それでなくても歳を重ねるに従い下半身は緩くなるのに、その速度を検査や治療で速めれば、後期高齢者の年齢に突入した頃には「また漏らした!」と虐待を受ける可能性だってある(冗談)。
 そうならないためにも、はっきり効果が分からない検査や治療はクオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)とのバランスで考えていく必要がある。

寿命への影響はほとんどなし

 ガンに限る話ではないが、治療することでその後の生活の質が守られ、寿命を全うできるなら、誰もが治療を選ぶだろう。その点で前立腺ガンは微妙である。特に後期高齢者と言われている75歳以上の場合、寿命への影響がはっきり認められない。前立腺ガンにかかっていたからといって早死したと認められるデータがないのだ。むしろ亡くなった後に前立腺ガンにかかっていたと判明した例が結構あるということだ。

 となると治療しても治療しなくても寿命への影響はないどころか、治療せず、あるいは前立腺ガンと知らずに過ごした方が普段通りの生活を送れたと言える。
 恐らく私の場合、健康診断でPSA検査をしていなければ前立腺ガンと気づくことはなかったはず。自覚症状があれば話はまた別だが、一切、自覚症状も何もなかったから。

 こういうこともあり、現段階で私が出した結論はQOLを維持するためにリスクがある検査、治療はしないというだ。
 因みに直近の8月24日の検査でPSA数値は若干ながら下がっていた。医師は「誤差の範囲内」と言ったが、検査前から今回は数値の上昇はないだろうと考えていた。
 というのは、監視療法とは言ったが何もしてないわけではなく、今まで以上に食生活には気を付けている(気を付けてもらっている)し、免疫力を高めるためのサプリメント(フコイダン系やキノコ系)を摂取しているからだ。その分、毎月の出費が増えているから生活の質が維持できているかとなると若干怪しいが。
 それでも医師の言葉に従って、これ以上のリスクを負うよりはいいと現段階では考えている。

 困るのは医師が次々と予約を入れ検査をさせたがることだ。次回も11月に検査をと言い、採血とCT検査をと言ったので「これ以上被爆はしたくないから」とCT検査は拒否した。すると「腎臓の結石は急に大きくなることがある」から「レントゲンの方が放射線はわずかだから」とレントゲン検査を入れられてしまった。
 日本の医療機関、特に大病院は検査をやたらしたがる。海外の医療機関と比べれば異常に多いと言われている。その一方で、国は医療費を削ることに熱心で、ちょっとポイントがズレているのではないかと思ってしまう。


# by kurino30 | 2021-10-25 08:50
治療の副作用だけでなく、生検リスクもある~前立腺ガンと告げられて(2)
生検の方法は2種類

 近所の肛門科の医師からは「恐らく痔からの出血だと思うから軟膏を挿入していれば1週間もせずに止まる」と言われたが10日も続いた。しかも止まったと思った1か月後に再度血便が数日続いた。以来、排便直後に便の様子を確認するようにしているが、血便は生検の結果だろうと考えている。そう考える理由は生検手術の方法にある。

 前立腺ガンを確定する生検手術の方法は2種類ある。1つは肛門(直腸)から器具を入れ前立腺に針を刺す方法で、もう一つは陰嚢の裏(肛門と陰嚢の間)から針を刺す方法だ。
 前者は麻酔なしでもできるが、C病院の場合、下半身麻酔をかけて行う。術後まれに(と言われている)出血や発熱することがあるのがリスクだ。
 まあ前立腺に針を10箇所以上刺して細胞を採取するわけだから、いかに内臓は痛みを感じないと言っても細胞が異常を感知するのは当然で、出血や発熱があるのは当然だろう。幸い私の場合は発熱はなかったが、肛門から器具を挿入する際に直腸のある部分(痔)が傷付いたのではないかと思っている。

 生検による副作用は他にもある。というか、こちらの方が重要だが、直腸から針を刺すので便による細菌感染の恐れがあることだ。また生検後に頻尿、排尿困難、便秘等の症状が出ることもあると言われている。

 すでに見てきたように、前立腺ガンを特定するための精密検査でも副作用があるにもかかわらず、あまりこの点は強調されずサラッと説明される傾向にあるので注意した方がいい。

PSA検査は曲者

 前立腺ガンの早期発見にPSA検査が有効なのは言を俟たない。実際、私自身がPSA数値の異常(というほど高くはなかったが)から前立腺ガンを疑われ、生検を通してガンと確定されたわけだが、このPSA検査というのが曲者である。

 近年、ガン細胞の発見技術は飛躍的に向上しており微量の血液や尿でガンを発見できる(いずれもまだ実用化されてない)までになってきている。これはガンの早期発見への道を大きく開き、歓迎すべきことではある。ただ手放しで喜べない側面もあるが、あまりそのことは言われない。

 PSA検査もそうだが簡単な採血で分かることから前立腺ガン発見数が飛躍的に増えてきた。このことは前立腺ガンの早期発見に繋がり、ガンでの死亡率低下に大きく貢献していると理解されそうだが、必ずしもそうではない。
 重要なのは前立腺ガンによる死者数の減少で、ガンの発見数ではない。どういうことかといえば、PSAの異常値=前立腺ガンではないということだ。前立腺肥大などほかの原因でも数値は上がるし、PSA検査による初期ガンの的中率は20%~30%と言われている。
 例えば私の場合、生検の結果、「ガンが見つかりました」と医師から告げられたが、その際「ガンの確率は30%でした」と医師が言ったのだ。それを聞いて、「えっ、わずか30%の確率だったか」と思ったのは事実だ。
 医師の方は30%の確率だったが早期に発見できてよかった、という意味合いで言ったのかもしれないが、私の方はそんな低い確率しかなかったのなら生検はもっと先でもよかったと感じた。

 そう感じた理由は前立腺ガンの特性にある。前立腺ガンは他のガンと違い進行速度が緩やかと言われている。そのため2、3か月先延ばしにしても、その間にガン細胞が急成長したり転移するということは少ない。
 もう1点は7.7というPSAの数値は異常に高いとまではいえない微妙な数値である。これが2桁の数値なら即生検、治療という段階に突き進むが、この段階では私自身は半信半疑というか、恐らくガンではないだろうが、とりあえず精密検査をした方がいいと言うなら受けておくかというような気持ちだった。生検のリスクに対する正確な認識が欠けていたのだ。

 「PSA検査は曲者」といった理由の1つがこれである。もう1つはガン細胞に対する反応がよすぎることだ。
 反応がよすぎて悪いことはないはず。早期ガンの発見に繋がることはいいことではないかと思われるかもしれないが、ガンの中にはごく初期段階で悪性ではないものも結構あり、そういう初期ガンは放っといてもというと多少語弊があるかもしれないが、慌てて治療しなくてもいいし、それほど怖がらなくてもいい。

 それは前立腺ガンは進行速度が遅いということも関係しているが、治療による副作用があるからで、治療するリスク、しないリスクの両方を考えて、どうするかを判断する必要があるだろう。

# by kurino30 | 2021-10-24 21:50
治療の副作用だけでなく、生検リスクもある~前立腺ガンと告げられて(1)
 「ああ、そうですか」。今春3月、医師から前立腺に「ガン細胞が見つかりました」と告げられて私はそう応えた。
別にショックで落ち込むこともなかった。やっぱり今回も外れかと思っただけだ。
昔からクジ運は悪い。ほとんど当たったことがない。お年玉付き年賀状だって最下位の切手しか当たったことがないのだから、今回も外れたかと思った程度だった。

定期健康診断で発見

 発見のきっかけは福岡市が実施している定期健康診断。
前立腺ガンの発見にはPSAという腫瘍マーカーが用いられるが、これは血液検査で分かるから手軽ということもあり、毎年定期的に検査していた。
 PSAの数値4以下は問題なしで、ずっと基準値以下だった。
それが数年前、ボーダラインの4に上がってきたので多少気になりはしたが、それでも基準範囲内。
多少の上がり下がりはその時の状態等にもよるから、次回は下がっているだろう程度に思っていたし、医師から特に注意されることもなかった。

 ところが1年後、昨年3月の検査でPSAの数値が5.5になった。
泌尿器科の医師もこの数値を見て即ガンを疑ったわけではなく、「一応念のため大きな病院で検査してみますか」という感じで紹介状を書いてくれた。
 この程度の数値ならそこまでしなくてもと思ったが、とりあえず医師の勧めに従うことにした。

 2か月後、C病院でエコー検査、CT検査、採血をした結果、PSAの数値は5.0と若干ながらダウン。
心配するほどの数値ではなさそうだと思ったが、病院医師は「この程度は誤差の範囲内」と言い、3か月後に再検査を勧められた。

 すると今度はわずかに上がって5.3。上がったとはいえ半年前の5.5に比べれば下がっているわけだから後は来年の検査でいいだろうと考えたが医師の見解は違った。

 医師はエビデンス(確証)が欲しい。どちらかはっきりさせたいのだ。かくしてまた数か月後に再検査を言われる。
そして今年2月の血液検査でPSAが7.7を記録した。
 やっとエビデンスが得られたと思ったのだろう。
「数値が順調に上がってきているので一度精密検査をした方がいいでしょう」
「たしかに”順調”に上がっていますね」
「いや順調という言い方は間違ってました」
「そうですね。確実に上がってはいますね。絶対数値より変動数値で見るべきだと私は考えていますから右肩上がりの数値は気にはなります」
「そうなんです。この数値だけを見れば、これですぐガンの疑いが濃いとまでは言えませんが、数値が上がってきていますから、精密検査をしておいた方がいいでしょう」
「精密検査というのは生検のことですね」
「そうなんです。前立腺に針を刺し、細胞を採って検査するのですが、針を12箇所刺すから痛いんですよね。いや麻酔をしますから痛みは感じないんですが、嫌がる人は多いですね。入院も3日ほど必要になります」
 こんなやり取りの結果、生検入院を了解した。

精密検査の副作用もある

 インフォームド・コンセントが言われだして30年近くなる。以来、何をするにも書面で同意(同意書にサイン)を求められる。
だが、「きちんと説明して同意を得」たかとなると多少疑問が残る。
一応説明はされるが、それは説明した、書面に署名してもらったという「作業」になってはいないかと思ってしまう。
 実のところリスクや副作用のあるなしについて医師が事前にきちんと説明することは少ない。
全く説明しないと言っているのではないが、患者に正確に理解させているかどうかという意味では甚だ疑問である。

 例えば生検で私が受けたリスク説明は「生検手術後、血尿が出ることがありますが、長くても1週間程で止まります」
「まれに頻尿になったり、逆にオシッコが出にくくなる人もいますが、その時はいつでも言ってください」という程度だった。
 では、実際にはどうだったのか。
尿道に挿したカテーテルを抜き、自分でトイレに行けるようになると尿は紙コップに出して看護師に毎回チェックしてもらう。
 最初は真っ赤な尿が出て少し驚いたが、排尿回数に比例するように徐々に赤色は薄くなっていき、
「だいぶ薄くなりましたね。もう紙コップにしなくていいですよ」と言われ、後はいつも通りのやり方で排尿。

 ところが、退院日の朝になって再び便器が真っ赤になるほどの血尿があり慌てたが、看護師も医師も
「血尿は薄くなっていますから大丈夫です」で終わった。
 不安は残ったが、退院後、自宅での排尿で驚く程の血尿は認められず、徐々に薄くなっていったので一安心。

 ただ前立腺に針を12箇所も刺しているわけだから内部で出血しているのは間違いなく、それは精巣にも溜まっている。
精巣に溜まっている血をそのままにしていても問題ないのかどうかは分からないし、
医師もそんなことまで説明してくれないが、射精時に真っ赤になるのはあまり気持ちのいいものではない。
せめてその辺りの説明は欲しいものだと思うが。

 ところが、2か月もたったある朝、下血していることに気付いた。
それもかなりの出血だったため、ホームドクターに電話すると、すぐ近くの肛門科に電話して、
「先生に話しておいたから、これから行きなさい」と言われた。
 実はその前に生検手術をした病院に電話し状況を伝えると予約をすぐ入れてくれたが、それは2日後で、
その旨ホームドクターに話すと「緊急外来で行くべきよ。分かった。それなら近くの○○先生に電話して
おくからすぐ行きなさい」と言われたのだ。

 ホームドクターはもう80歳を少し過ぎた内科の女医だが、いつも適切なアドバイスを貰えるのと、
これは自分の専門科外と判断すると、その場で他の診療所に電話してアポイントを入れてくれるから、
信頼して他診療所での診断結果も全て報告し、私の診断歴はそこで皆分かるようにしている。

 診断の結果、下血の原因は痔による出血だと言われた。
痔の軟膏をもらい、しばらく朝晩使用するようにと言われたが、腑に落ちないのは痔による出血である。
痔持ちではあるが、それは脱肛程度で、出血の経験はない。だから、なぜ? という疑問が湧いた。

 考えられるのは生検による影響しかなかった。
だが2か月も経ってというのが腑に落ちなかったが、下血に気付いたのが今というだけで、
実はそれ以前(生検後)から出血していたのではないだろうか。

 第一、いままで排便直後に便の様子を確認したことはなく、排便すれば便座に腰掛けたまますぐ流していた。
それが今回運よくたまたま気付いただけで、実は以前から(生検後から)下血していたのではないかと疑ったが確証はない。
ただ、今回の生検手術を受けるまでは下血の経験がなかったとだけは言える。


# by kurino30 | 2021-10-07 09:48