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病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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顔を見て弟が涙を流す。
 手術から1週間後、神戸の済生会病院に弟を見舞う。
福岡から岡山県東部の実家まで一度帰り、翌日中国自動車道を走っている縦貫バスに乗って西宮まで行き、バス停まで迎えに来てくれた弟嫁の車に同乗し済生会病院に。

 問題は朝家を出る時、お袋にどう説明するかだったが、前日、「明日は大阪の友達に会いに行く約束があるから」と説明をしておいた。
 ただ認知症が少し出ているので、翌日、出かけると言うと、どこに行くのか、いつ帰って来るのか、神戸の弟とは会わないのかなどと聞いてくるだろう。
 弟に会いに行くと言えば、自分も連れて行ってくれと言うだろうから、弟の病気、手術のこともお袋には一切隠していた。
 だが、大阪に行くと伝えた時から、なんとなく弟と会うのではないか、と勘付いている風だが、「大阪の友達と会う」で押し通した。

 術後1週間目に見舞いに行ったのは、順調にいっていればこの頃は喋れるだろうと思ったからだ。
病室に見舞うと弟は元気だった。
開腹傷跡を見せてやろうかと、腹巻きを外して見せてくれたりしたが、俺の顔を見た瞬間、タオルを顔に被せしばらく黙っていた。
「私ら家族の前では涙を見せたことがないのに。この人が泣いたのは今日が初めてですよ。やはりお兄さんを信頼しているんやわ」と弟嫁が言う。

 手術のせいで腹に力が入らないからだろう、声に力がなく少しかすれている。お袋のことを随分心配して色々尋ねるが、その時の喋り方と声が亡くなったオヤジにそっくりだったのでビックリ。
そのことを弟に告げると「オヤジに似ているのは俺じゃなく、兄貴の方だよ」と言い、また涙ぐむ。
家族の前では気丈に振る舞っていたようだが、やはり心細かったのだろう。
泣きたい時には我慢せず思い切り泣けばいい。
そう言ってやりたかったが、嫁の前では心をさらけ出せないのかもと思い、言葉を飲み込んだ。

 昼食がまだだったので、その後、病院の食堂(レストランと言うより食堂という表現の方が近い感じ)で食事をしながら弟嫁に今後の心構えを話し、いつでも力になるから愚痴でもなんでも私に話すようにと伝える。
退院後から家族の長い闘いが始まるのだから。
by kurino30 | 2013-08-21 00:10