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病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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治療の副作用だけでなく、生検リスクもある~前立腺ガンと告げられて(3)
治療法の選択を迫られる

 さて私の場合。生検の結果ガン細胞が見つかったと告げられ、その場で次の検査を指示された。ガンのステージの確定である。それには骨シンチグラフィーという検査が必要になる。
 要はガンが前立腺の範囲内にとどまっている(局所限定ガン)か、それとも転移しているか、転移する可能性があるかを調べるのだ。それにより治療法が変わってくる。
 治療法は大きく分けて3つ。手術でガンを切除する方法と放射線でガン細胞を死滅させる方法、そしてホルモン療法だ。どの方法を取るかはガンができている場所やステージにもよるが、ホルモン療法は手術も放射線治療も望めない場合に採る方法のようだ。

 「中リスクでした」。骨シンチ検査の結果を説明しながら、医師はそう告げた。
「初期リスクだろうと思っていましたが、中リスクですか?」
「はい、中リスクです。ただ、骨への転移はないし、局所限定ガンですから手術、あるいは放射線での治療になります。どうされますか」
「以前にもお話しましたが手術の場合は術後、勃起障害や尿モレが起きることがあります。以前は広範囲に切り取っていましたが、最近は技術も進化してできるだけガンの周囲だけを切り取り、神経を傷つけないようになっていますが、それでも広範囲に切り取らなければならないことがありますし、その場合は副作用がでるというリスクはあります」
 手術に限らず放射線治療でも同じような副作用はあると言い、「どちらが嫌ですか。セックスができなくなるのと、尿モレと」と30代後半と思しき医師は尋ねた後、バカな質問だったと気付いたようで「どちらも嫌ですよね」と自答した。

「先生、選択肢は2つだけではないでしょう。もう一つありますね」と問いかけると
「あっ、重粒子線治療を言われていましたね。放射線治療の1つですが、それもあります」
「いや、そうじゃなく。何もしないという選択もあるでしょ」
「? 経過観察ですか。それは初期リスクのガンの場合はありますが、中リスクは」
ありえない、と言いたかったのかもしれないが、それ以上は言わず、とりあえずまた3か月後にPSA検査をすることになった。3か月の経過観察だ。

副作用とQOLのバランス問題

 私がしばらく経過観察(監視療法)を選んだのには理由がある。1つはガンのステージが中リスクとはいえ、初期リスクに近い中リスクだろうと感じたからだ。
 2つ目は治療の副作用である。副作用に対する受け止め方は医師と患者では違うし、患者の間でも個々人で違うし、また年齢によっても異なるだろう。
 だから以下は私個人の受け止め方であることを最初にお断りしておくが、副作用は生活の質との関係で捉えるべきだと考えている。

 C病院の若手医師は私との会話の中で「セックスができなくなるのと、尿モレとどちらが嫌ですか」と尋ねたが、「勃起障害」という言葉ではなく「セックス」とサラリと口にした点は好意的に受け止めた。
 これは人にとって重要な問題であるからこそ、遠回しな言い方ではなく直接的な表現で言ってもらった方が理解しやすい。ただ、サラリと言うことが重要だが。

 「できなくなる」というのと「する、しない」というのは全く違う。前者は物理的に不可能になるということである。対して後者は物理的な可能性はあるということで、それを行動に移すかどうかは主体が決められるということだ。
 自分で選べるかどうか、選べる選択肢が「ある」のと「ない」のでは精神的に全く違う。例え結果として勃起しなくてもだ。

 次は尿モレ、排尿困難、便秘等の副作用である。この点を治療開始前に医師がどの程度詳しく伝えてくれるだろうか。恐らく患者側から、それこそ「こういう場合があるのでは」「こんな話を聞いていますが」などと根掘り葉掘り尋ねない限り、通り一遍の説明で終わるのではないか。

 実は10年近く前、前立腺の粒子線治療をした友人がいる。前立腺の粒子線治療はこの4月から健康保険適用になったが、それまでは先進医療で費用の250~300万円は自己負担である。
 私は先進医療特約を付けていたから、治療する場合は友人が入院治療した兵庫県の粒子線治療センターでと決めていたし、C病院の医師にもそう伝えていた。

 粒子線治療のメリットはピンポイントでガン細胞を狙い撃ちできることだ。放射線による副作用もないに等しいだろうと、大した根拠もなく考えていた。実際、粒子線治療をした友人は術後、普通の生活をしていたし、問題は全く見当たらなかった。
 ところが、数年前、排尿困難になり救急車で病院に運び込まれるということが数回起きた。尿は常に出ても困るが、出なくても困る。特に排尿困難はのた打ち回るほど痛いらしい。
 だが、友人から排尿困難で入院し導尿してもらったという話を聞いても、そのことと粒子線治療が結び付かなかった。しかし、これは紛れもなく放射線治療の副作用で「粒子線治療で尿管が傷付いている。そうなる人もいる」と医師から聞かされたとのことだ。
 以来、友人は、いつ、どんな状況で排尿困難な状態に陥るか分からないという不安から海外旅行はもちろん中期旅行でさえ行けなくなった。

 尿モレの方はどうなのか。どの程度漏れるのか、大人用の薄型オムツ程度で済む話なのか、それでは済まないのか。
 それは個人差があるから一概には言えない、と言われれば(恐らくそう言うのだろうが)ますます困る。
 それでなくても歳を重ねるに従い下半身は緩くなるのに、その速度を検査や治療で速めれば、後期高齢者の年齢に突入した頃には「また漏らした!」と虐待を受ける可能性だってある(冗談)。
 そうならないためにも、はっきり効果が分からない検査や治療はクオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)とのバランスで考えていく必要がある。

寿命への影響はほとんどなし

 ガンに限る話ではないが、治療することでその後の生活の質が守られ、寿命を全うできるなら、誰もが治療を選ぶだろう。その点で前立腺ガンは微妙である。特に後期高齢者と言われている75歳以上の場合、寿命への影響がはっきり認められない。前立腺ガンにかかっていたからといって早死したと認められるデータがないのだ。むしろ亡くなった後に前立腺ガンにかかっていたと判明した例が結構あるということだ。

 となると治療しても治療しなくても寿命への影響はないどころか、治療せず、あるいは前立腺ガンと知らずに過ごした方が普段通りの生活を送れたと言える。
 恐らく私の場合、健康診断でPSA検査をしていなければ前立腺ガンと気づくことはなかったはず。自覚症状があれば話はまた別だが、一切、自覚症状も何もなかったから。

 こういうこともあり、現段階で私が出した結論はQOLを維持するためにリスクがある検査、治療はしないというだ。
 因みに直近の8月24日の検査でPSA数値は若干ながら下がっていた。医師は「誤差の範囲内」と言ったが、検査前から今回は数値の上昇はないだろうと考えていた。
 というのは、監視療法とは言ったが何もしてないわけではなく、今まで以上に食生活には気を付けている(気を付けてもらっている)し、免疫力を高めるためのサプリメント(フコイダン系やキノコ系)を摂取しているからだ。その分、毎月の出費が増えているから生活の質が維持できているかとなると若干怪しいが。
 それでも医師の言葉に従って、これ以上のリスクを負うよりはいいと現段階では考えている。

 困るのは医師が次々と予約を入れ検査をさせたがることだ。次回も11月に検査をと言い、採血とCT検査をと言ったので「これ以上被爆はしたくないから」とCT検査は拒否した。すると「腎臓の結石は急に大きくなることがある」から「レントゲンの方が放射線はわずかだから」とレントゲン検査を入れられてしまった。
 日本の医療機関、特に大病院は検査をやたらしたがる。海外の医療機関と比べれば異常に多いと言われている。その一方で、国は医療費を削ることに熱心で、ちょっとポイントがズレているのではないかと思ってしまう。


by kurino30 | 2021-10-25 08:50