病気と医療について考える~栗野的通信
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ガンで旅だった妻への挽歌と、病気と医療についての考察。
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尿道にカテーテルを挿入する
 手術前に告げられていたのに手術が終わっても全く記憶にないことがありました。それは導尿のために尿道にカテーテルを挿入する時のことです。いつ、どのようにされたのか全く記憶にないのです。どうもその時は早速と眠っていたようです。

 術前、尿道にカテーテルを挿入すると聞いた時、顔をしかめました。これほど痛いものはないとよく聞くからです。
 カテーテルというのはゴム製の管で、術後の導尿のために尿道の奥まで管を差し込むのですが、これが結構痛い。管はゴム製のものが多いそうですが、なかには金属製、プラスチック製もあるというから、それを聞いただけでも痛みが伝わってきそうです。

 実は一度、カテーテルを挿入した経験があります。
妻が亡くなる1年から半年前の頃だったと思いますが、血尿が出たのである総合病院で調べてもらいました。それまでもたまに採尿検査で潜血反応を指摘されたことはありましたが、この時は便器が真っ赤に染まるほどボタボタッと落ちたので、本当に青ざめました。女性なら恐らくメンスと思ったに違いありません。それほどの量だったので精密検査を受けることにしました。
 その時にカテーテルを初めて経験したのですが、この時は尿道に内視鏡カメラを入れた検査でした。
「えー、尿道に入れるんですか」
「一応麻酔をしてから入れますから。でも、人によっては痛がる人もいますね」
「かなり痛いんですか?」
 すると側にいたナースが
「痛いみたいですよ。大の大人でも悲鳴を上げる人がいますから」
 と、こちらの不安をさらに駆り立てるように言い放ちました。
 悲鳴を上げるのか。悲鳴まではみっともないな。なんとか悲鳴を上げるのだけは我慢したいが・・・。
そんなことを考えながら診察台の上に腰掛けていました。

 この診察台というのが産婦人科で見かけるようなやつで、下半身丸出しのまま診察台のアームに両足を載せるわけです。
耐えられないのがその姿勢のまま随分待たされたことです。
これは屈辱的でした。目の前をナースが行き来しているわけですから。
もう少し患者の人権に配慮する必要があるのではないか、とその時本当に憤りましたが、なんとも姿勢が姿勢ですから様になりませんね。

 でも、幸いこの時は言われているほどには痛みを感じることがありませんでした。「先生は名医ですね」
若い医師にそう伝えました。

 さて、今回の手術では全く覚えていないうちにカテーテルの挿入をされたようです。
まあ、痛みを感じなくてよかったのはよかったのですが。
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by kurino30 | 2006-02-21 21:04
手術室の出来事
 手術は小学校3年の時にした急性虫垂炎以来というのは、すでに書きましたが、その時の記憶では太ももに局部麻酔の注射をしたと思います。大きな注射針で痛くて騒ぎまくりナースと医師を手こずらせたようです。
 どうも手術が終わるまで手こずらせたようで、祖父が医師に私の腕を押さえるように言われていました。
 部分麻酔ですから手術中の会話や音がすべて聞こえます。しかも痛みはないから、腹を切られているのに当人にはその自覚がありません。カチャカチャという手術道具が触れ合う音だけが聞こえてくるものだから、とうとう癇癪を起こし、「いつまでかかるんじゃ。さっきから終わる終わると言うけど、終わりゃせんじゃないか」と手術中の医師に悪態をついていました。当時はやんちゃ盛りの子供でしたし、元気そのものでした。それを聞いた医師が「こりゃあ元気じゃあ」と祖父に言っていたのを覚えています。

 今回は手術前に主治医から「局部麻酔ですが、手術中横になってじっとしているのは結構疲れると思います。カチャカチャという手術道具の音が聞こえるのもうるさいでしょうから、手術中は寝ている方がいいでしょう。鎮静剤を注射するようにしますから」と言われました。
 その言葉を聞いた時、眠っている間に手術されるのは嫌だな、という思いが一瞬過ぎりましたが、小学生の頃の虫垂炎の手術も同時に思い出し、眠ったままでもいいかと思い直し、鎮静剤を打たれることに同意しました。

 予想外だったのは麻酔注射です。
「麻酔注射は背骨の辺りにしますから、横向きになって両足を抱え、お腹を見るような姿勢を取ってください」
 と言われました。
「注射をする時、ズズッという感じがしますからね」
 私の肩と膝を抱え込み、エビのように背中を曲げた姿勢を取らせて、年配のナースはそう優しく語りかけてくれました。
 ところが、なかなか麻酔注射が打たれないのです。彼女たちの会話からどうやらなにかトラブルが発生したらしいことが分かりました。
(おい、おい、大丈夫か)
 途端に不安になりました。
麻酔時のミスは意外に多いから、注射ミスで下半身不随になったりしたらどうしようと、その時まじめに考えました。

「大丈夫ですか。指の先が痺れたような感じはありませんか」
注射をしながら、ナースがそう問いかけてきます。
「大丈夫です」
 少しホッとしながら、そう答えていました。
麻酔注射も、聞かされたほどには痛いというか、ズズッとくる感じはありませんでした。
 
「ここを触っているのは分かりますか」
 しばらくしてナースと医師が足の先とお腹の辺りを触りながら聞きました。足の先は分かりましたが、もう一箇所はどこを触られているのか分かりませんでした。麻酔が効いてきたようです。
「これからお腹を切りますが、痛みは何も感じませんから」
 そう言って、次に主治医が念のため私の氏名と手術箇所を尋ねました。
「はい、間違いありませんね」
 いよいよ手術です。

 TVや映画で見るのと同じ格好をした医師が2人手術台のそばに立っていました。1人は主治医で、もう1人はそれまで顔を合わせたことがない医師でした。そしてナースが4人と思いましたが、手術室を出る前に確認したところ、1人は麻酔担当の女性でした。
 手術室に入って最初に見たのは時計で、最後に見たのも時計でした。
入った時刻は1時30分、出た時は針が3時15分を指していました。
2時間弱手術室にいたことになりますが、手術室に入ってから麻酔その他の準備がありましたから、実際の手術に要した時間は1時間程度になります。
 ともあれ、無事終わりました。
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by kurino30 | 2006-02-18 09:26
手術室には裸で運ばれるのだあ。
 手術の当日、ナースがやってきて「着ているものを全部脱いでT字帯だけ身に着けて下さい」と言いました。
「えっ、裸になるの?」
 裸のまま運ばれるのかとビックリしましたが、そんなこちらの気持ちを見透かしたように、「上にシーツを掛けて手術用のベッドで移動しますから」。
 実際には手術着を着せられて運ばれるのですが、手術着はボタンなしのパジャマのようなものです。それを前後ろに着るわけで、ちょうど仰向けに寝て、上から手術着を掛けているような形になります。
 「なるほど」。妙なところで感心しました。手術室に入れば、そのまま脱げますし、術後はまた両腕だけ通してかぶせるだけですから、実に合理的です。

 やがて手術室に運ぶベッドが運び込まれました。これがまた実にうまくできていて感心しました。
 私が寝ているベッドに横付けすると、高さを同じように合わせます。次に手術室用ベッドの台がこちら側にスルスルと伸びてきて、私が寝ているシーツの下に入っていきます。そして私を乗せると、今度は手術室用ベッドの方に縮んでいきます。これで私の移動は見事に完成です。
手術室に入ると、今度は先程と逆の順序で手術台に移動します。
 そうそう、今回初めて知りましたが、手術室のナースと病室のナースは別なのです。手術は手術専門のナースが担当しているのですね。
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by kurino30 | 2006-02-12 22:10
本人確認の認識バンド
b0039302_1571029.jpg 入院中肌身離さず着けているのが、この認識バンドです。
点滴をする時も注射をする時も、もちろん手術をする時も、認識バンドのバーコードを読み取り機で読み取り、本人であることを確認します。

 医療ミスの大半は人為的な初歩的ミスです。
酸素吸入器と笑気ガス装置を繋ぎ間違えたとか、点滴装置に入れる薬を入れ間違えたとか、ひどいのになると別人と間違えて手術されたなんてのもありました。
だから点滴をされる時が一番緊張します。
点滴装置の名前は自分の名前になっているかどうかをいつも確認していました。
名前が合っていれば取り敢えず安心しますが、それでも点滴が始まってから1分間程は体に異常が起こらないか緊張したままです。

 認識バンドの採用で初歩的なミスはかなり防げているのではないでしょうか。
実際、私はこの病院に入院中、ほとんど緊張せずに済みました。
それでもミスは起きます。
それは機械に頼り切り、自分の目で、耳で確認しないからです。
あるいは逆に機械を信用せず、機械が異変シグナルを出しているのに、それを無視する場合です。

 チェックは二重三重に必要です。
手術室に入る前、私はナースから氏名と手術箇所(右か左か)を聞かれました。
「お名前を教えてください」
「栗野 良です」
「手術する場所は右ですか左ですか」
「左側です」
「ありがとうございました。間違いありません」
やれやれ、まず初歩的ミスはクリアしました。
あとは先生の腕を信ずるだけです。
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by kurino30 | 2006-02-07 21:45
手術時にオムツをする
 入院時、手術前にT字帯1枚、紙おむつ(長方形)3枚、タオル2枚、ティッシュ1箱を用意するようにと言われました。
 T字帯はいわゆるフンドシで、実は比較的最近まで私はフンドシを常用していたので、自前のフンドシを持参しました。T字帯は採尿をしやすくするためだろうと解りましたが、なぜ必要なのか解らなかったのが紙おむつ3枚でした。

 そこでナースになぜ紙おむつが必要なのか尋ねたところ「手術する時に麻酔をかけるので筋肉が弛緩し、下まで降りてきている便が漏れることがあるからです」と教えてくれました。
そのため手術用の紙おむつは履くタイプではなく長方形のものです。簡単に言うと便受けですね。

 これが役立つということは術後歩けるようになって初めて解りました。
実は術後丸2日間は熱に悩まされましたが、熱も少し下がって動けるようになり、それまでの手術着からパジャマに着替えた時にオムツがほんのわずかだけど汚れていたことが解ったのです。

 手術当日は朝5時半、まだ寝ている時にナースが浣腸をしに来ます。
当初、浣腸は術後に排便したくならないようにするためと考えていましたが、もちろんそれもあるのでしょうが、やはりオムツ同様に麻酔で筋肉が弛緩し漏れるのを防ぐためのようです。

 浣腸も子供の頃にされた記憶はありますが、大人になっては初めてです。
「浣腸するとどれぐらいで効いてきますか」
「人によって違うようですが、大体10分ぐらいですね。なかにはすぐトイレに行かれる方もいらっしゃいますが」
「えっ、そんなにすぐ効くの」
「ごくたまにすぐ漏れる方もいらっしゃいますから」
 それを聞いてビックリしました。最悪トイレに行くまでもたないこともあると思うと、とたんに緊張しました。
「はい、終わりました」という声で、後ろを押さえながら慌ててトイレに駆け込みました。

 いやー、本当に初めての経験ばかりでやることなすことに興味津々でしたが、その一方でスリリングな思いもしました。
後程聞いた話では、隣のベッドの人は浣腸されてその場で漏らしたと言っていました。やはり事前に色々聞いておくべきですね。
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by kurino30 | 2006-02-03 09:25
別人に思われる。
 何分大人になって初めての手術ということもあり、何もかもが興味津々でしたが、ただ一つ残念だったのは30歳の時から生やしているヒゲを剃り落としたことです。
「ごめんなさい。言い忘れたんですが、手術室に入る前にヒゲも剃ってもらうことになっているんです」
 やってきたナースが気の毒そうな顔をしてこう通告しました。
「えっ、ヒゲも剃るの。ヒゲは関係ないんじゃないの」
「ええ、そう思うんですけど、手術室に入る時には腕時計や指輪もはずしてもらっていますから」

 何となく釈然としませんでした。というのも、先ほど剃られた下の毛はメスを入れる側だけで、反対側の毛は剃られてなかったからです。右と左がアンバランスで、なんとなく中途半端です。剃るならそちらの方を全部きちんと剃るべきではないか。そう思いました。しかし、手術室に雑菌を持ち込ませないということなのだろうと思い、それ以上抗わず、洗面場に行き、思い切って「えい、やっ」とヒゲを剃りました。
ところが、長いこと剃ったことがなかったので、カミソリで当たると肌がカミソリ負けを起こしそうで、ヒリヒリ。ヒゲを剃る悲しさより痛みで涙が出そうになりました。

 剃り終わって鏡を見ると、そこにいたのは別人でした。
(なんとも間が抜けた顔だな・・・)
とても自分の顔とは思えなかったし、こんな顔は他人には見せられない。見舞いを断っていてよかった、と思ったものです。
 自分で見まがうほどですから他人が見まがうのは当たり前で、主治医が病室に来た時は私の名前を二度も呼びました。私が返事をしているのにベッドを間違えたのかという顔をして立っていました。
私が「ヒゲまで剃らされましたよ」と言って初めて納得したみたいで、「ああ、それでですね。なにか最初見た時と印象が違うなと思っていました」と笑っていました。

 続いてやってきた薬剤師も妙な顔をしていたので「ヒゲも剃れといわれたよ」と言うと、「そうでしょ。前と印象が違いますから別人かと思いました」だって。
「間が抜けた顔になったでしょ」
「ヒゲがない方が若く見えますよ」
 いくら褒められても自分で見慣れないこともあり、あまり好きにはなれませんでした。
退院までには少し生えるだろう。
そう思うのがやっとでした。
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by kurino30 | 2006-02-01 00:28